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お知らせ

「南会津町さゆり荘建設事業基本設計業務委託」に関する ワークショップ関連講演会&懇談会の開催状況報告

2018.7.30

 7/24(火)の15:00~20:00に「さゆり会館(南会津町)」で標記ワークショップ講演会&懇談会(参加者約30名)を開催しました。南会津町より受託している「さゆり荘建設事業設計業務委託」の一環として行ったものです。
 講師は温泉ビューティ研究家でトラベルジャーナリストの石井宏子氏(本設計プロポーザル審査員)です。石井氏は旅に出かけて宿に泊まることをライフワークとし、トラベルジャーナリストとして取材・執筆、講演など年の半分は日本・世界を旅している方で、「地域資源を活かした温泉宿とは」と題してお話しいただきました。


講演会全景

 前半は多様な経験を元に温泉宿の魅力についてのお話しでした。宿の魅力は泊まっただけでその地域の良さを感じられることで、ポイントは4つ、①温泉、②食事、③宿、④アクティビティ(周辺環境)にあると言います。そこに旅行会社の一泊二食付き料金を重ね合わせると、1ポイントに付き1万円で、4ポイント全てを満足させるとなると4万円の宿泊料金が目安となるとのことです。
 このことを参考に「新さゆり荘」をどのような魅力を持った宿としたいのか、①温泉:温泉質、湧水、風呂、②食事:その土地の食材、摂取方法(時間、内容)、③宿:過ごし方、個性、心に響く体験、④アクティビティ:自然(山、森、海)、温泉街(街、人)の各要素をどこまで高めることができるか、「わざわざ行きたい『旅』とは、その土地にしかない①温泉+②食事+③自然+αがその『旅』ならではの魅力である。」と話されました。


石井氏の講演

 後半は事例紹介を中心としたお話しでした。高知市に隣接した山間にある人口1,000人の旧土佐山村(現:土佐山市)では過疎化に歯止めをかけるべく「まちづくり協議会」を立ち上げ、継続的なワークショップを通して整備を決めた温泉宿泊施設「オーベルジュ土佐山(高知県)」の事例を紹介いただきました。地元雇用、地場の食材提供を優先した公設民営型の施設で、延べ面積約2,000㎡、客室12室、日帰り入浴、宴会場併設等は「新さゆり荘」の計画と同規模で大変参考になりました。
 併せていくつかの温泉施設の事例を紹介いただきました。①鹿児島県妙見温泉「忘れの里:雅叙園」は古民家を移築した茅葺きの施設でその地域の暮らしに触れることができる宿、②静岡県中伊豆吉奈温泉「リゾート&スパ伊豆:東府や」はカフェ(足湯)とベーカリーを併設して地域住民や通過客も利用できる宿、③新潟県南魚沼郡大沢温泉「里山十帖」は古民家を改修した旅館で客室は洋風、自然豊かな豪雪地帯で露天風呂と山野草中心の料理でもてなす宿、④岐阜県奥飛騨温泉郷福地温泉「湯元長座」は古民家で客室は格式のある純和風、郷土料理と離れにある露天風呂が魅力の宿、⑤愛媛県内子町「オーベルジュ内子」は街並みが一望できる自然豊かな丘の上にあり、施設内に和蝋燭や燭台、創作和紙、木工製品等を配した地域の伝統文化を感じさせる宿、⑥長崎県「五島列島リゾートホテル:マルゲリータ」は旧国民宿舎を全面改装した施設で、海を望む高台から静かに沈む夕日や朝日が一望でき、キリシタンの歴史が息づく祈りの島でイタリアンを食するなど、来訪者は元より住民も非日常を味わえる不思議な安堵感に包まれる宿。紹介いただいた宿はそれぞれに特色のある施設で大変参考になりました。
 最後にお話しいただいたのが運営・営業戦略についてです。事例紹介いただいた施設の中には公共施設もありましたが運営はノウハウを持った民間会社への委託です。また、ロゴマークのデザインやホームページの内容も施設のイメージアップ戦略に欠かせない構成要素のひとつであるとのことでした。


会場からの質疑

 講演終了後の懇談会(参加者18名)は、石井氏を中心に活発な質疑応答や意見交換が行われました。「どのような魅力のある宿にしたいのか。外貨を稼ぐお客様を招き入れる宿にしたいのか。地域住民が使いやすい施設にしたいのか。」、参加者それぞれの多様な思いを胸に様々な意見が出されました。
 最後に石井氏から、「全国的に公共の宿は苦戦していることを前提に公設民営等の議論も必要だが、基本的な方向性を定めて議論しないと総花的で魅力のない施設となってしまう。」とのコメントをいただきました。民間と競合する公共の宿の設計を進める上で大変参考になる講演会でした。


懇談会での質疑応答