新着情報 TOPICS

研修会

「建築設計技術研修会(青木茂氏講演会)」の開催結果について

2018.10.24

 当組合では、10/19(金)に白河市の白河市立図書館会議室で今年度事業計画に上げていた標記研修会を開催し、組合員をはじめ行政担当者、施工者など約80名(組合員約30名、協会員約40名、自治体職員約10名)が参加しました。本研修会は福島県建設業協会との共催で開催したものであり、「建築物に新たな息吹を与える研修会」と題して建築物のコンバージョン等に関する再生手法を学びました。
 研修会開催の背景ですが、近年、自治体等では経年劣化した施設の統廃合や建替え、改修、解体等の方針を示す「公共施設等維持管理計画」を作成するなど建築物の再整備を進めています。一方、民間市場では本格的な人口減少社会の到来を控え街中には空き家や空き建築物が増加しています。そして、これら建築物の中には耐震性能を確保しながら再生を図ることで環境への配慮や市街地再生に寄与することが可能な施設も含まれています。その事例の一つが物販店をリファインした市民交流センター「マイタウン白河」です。
 冒頭、共催した福島県建設業協会の大和田建築技術委員長(大丸工務店:福島市)は、本研修会開催に至った背景と長寿命化時代の施設再生のあり方について触れ、快く講師を引き受けて下さった講師の方々を紹介しながら開会の挨拶を行いました。


挨拶:大和田建築技術委員長(福島県建設業協会)


講演:桜井課長(UR都市機構)

 講演会は、はじめにUR都市機構の桜井課長が「時代ニーズを睨んだ改修手法」と題し、施設管理者の立場からUR賃貸住宅のストック再生・再編方針に基づく団地価値向上の取り組みについて講演されました。現在、約74万戸を管理し維持修繕している賃貸住宅のストックは昭和40年代のものが多く70年間のメンテナンスサイクルを設定し点検・修繕項目をチェックしていること、ストックの価値向上に向けたリニューアルを行っていること、EVの設置やバリアフリー対策を講じていること、環境整備やグレードアップ対応等の改修を行っていることなどについてお話しいただきました。 
 二人目は(株)青木茂建築工房の青木代表です。「リファイン建築」と題しこれまで手がけた作品を題材に講演されました。はじめに東日本大震災の被害を受けた宮城県内の賃貸マンションの事例を取り上げ、事業検討のプロセス(施主の要望確認、構造チェック、法的チェック)から耐震補強、建基法の検査済み証発行、適切管理等の可能性を確認し、設計前の予備調査(資料収集、現地調査、構造体(コア抜き)検査)を基に、行政協議(建基法等)、構造調査(コア抜きデータ、構造体はつり、ひび割れ、傾き確認)、実測調査、増築計画(既存不適格の確認)を行い、再生工事のプロセス(部分解体、構造補強、内外装・設備の更新)から家歴書(補修記録、前後の写真)を作成するに至る工程と取り組み姿勢をお話しいただきました。


清瀬けやきホール(ビフォー)


(アフター)


みなと銀行芦屋駅前支店(ビフォー) 


(アフター)

 また、他の事例では一部解体することで重量軽減を図り耐震改修を容易にすること、一部増築することで施設デザインを大きく変えることができることなどもお話しいただきました。単にデザインを優先するのではなく、既存建築物の基本的な評価をしっかりと行った上で施主の要望に答えている建築家の印象を受けました。


講演:青木代表((株)青木茂建築工房) 


星部長((株)兼子組)

 三人目はマイタウン白河の工事施工者である(株)兼子組の星部長です。施工時の仮設計画や工事写真を基に、現場変更を含め工事の進捗管理や苦労された点などをお話しいただきました。物販店を白河市の複合施設にコンバージョンしたものであり、経年劣化により安全面での改善が必要であった建築物に新たな視点を加え、施設全体の利活用を総合的に見据え、根本的な解決をリファイニング建築の手法を用いて再生した施設です。


マイタウン白河(外観&内観)

 四人目はマイタウン白河の設計者である(有)桂設計の鈴木代表から現場視察に関しての情報提供をいただきました。白河市発注の設計は一般競争入札で行われたこと、その後発注者との協議の中で基本設計を青木茂建築工房に協力依頼したこと、それらの監修を基に実施設計を行ったことなどを説明いただきました。


講師:鈴木代表((有)桂設計) 


挨拶:平子代表理事

 最後に、閉会の挨拶に立った当組合の平子代表理事は、それぞれの講話に感想を加えながら今後の業務の参考にして欲しいと締めくくりました。
 講演終了後、会場をマイタウン白河(市民交流センター)に移し、講師と共に施設見学会を行いました。物販店(イトーヨーカドー)の面影はなく、外壁は板金加工された鋼板貼付仕上げ、出入り口は壁面を解体し開放感のあるカーテンウォール、内観は中央部のスラブを解体し開放感のある階段とスケルトンのEVを設置し、白を基調として明るい雰囲気の仕上げとしています。約40分程度の見学の後、現地解散としました。参加者の皆さんには長時間にわたる講演会&見学会お疲れ様でした。
 

マイタウン白河(現場見学会全景)


講師による説明風景